時代を映す言葉と聞きたい言葉と
長かった梅雨がやっと終わったと思う間もなく、今度は猛烈な暑さがやってきて、天気の荒々しさになかなか順応できない夏になっています。 先月は働き方改革の影響について長々と不安を書きましたが、今月になって面白い言葉を知りました。今ごろ知ったのかと笑われそうですが、今回は時代を映し出す言葉について私なりの解釈をしてみたいと思っています。
フラリーマン
働き方改革で、定時に帰宅できるビジネスマンが増えました。彼らは今までより早く家に帰って、ゆったり休息しているはず、または自らのスキルアップのために勉強などに勤(いそ)しんでいるはずと思いきや、やはりそうはならず、相変わらずの深夜帰宅を続けている人が多数といいます。彼らの呼び名がこれで、家には直帰せず書店をブラブラしたり、家電量販店で涼んだり、カフェで長居したり、一杯ひっかけたり…要するに、カバンを肩に街をフラフラしているらしいのです。
なぜ家に帰りたくないのか。帰宅ラッシュの時間を避けたい、家事を手伝わされるのが嫌だ、家に居場所がない、家族と仲が悪い…などがその理由のようです。
国民の幸せを実現するための働き方改革。やはり不思議な改革です。
せんべろ
先の言葉と呼応するように、せんべろの店が人気といいます。
この言葉も最近知ったのですが「1000円でべろべろに酔える」店のことらしく、一人でフラリと入って、焼き鳥や枝豆などをアテにビールや焼酎を2、3杯やって良い気分になり、1000円程度支払って帰る、ということになります。いわゆる立ち飲み屋や大衆居酒屋といわれる店のことで、サラリーマンの憩いの場を指す新しい言葉ということです。
なにしろ、働き方改革によって給料は減ってきています。勢い、このような店の需要が増えてくることになります。
令和の時代に、二つ前の昭和時代に立ち返るようなこの潮流。われわれ日本人は、どこに行くのでしょう。
希望
この言葉は、これがないねという否定文で耳にすることが大半となってきました。
7月末に発表された上場企業の今年4~6月期決算によると、米中の貿易摩擦などを背景に業績が悪化する企業が増え、製造業の3社に2社は減益となっているとのことでした。
どの国も自国ファーストの動きを加速させてきて、その結果、各国の経済に影響が出てくる。そうして目にするのは少しずつ景気が後退していくサイン。これでは、将来への明るい希望を描けなくなってしまいます。
努力すれば報われるはずながら、その努力が思いも寄らぬ政治的なまたは政策的な影響でゆがめられていく。経営者の一人として、こんな世界で戦っていかねばならないせつなさを考えてしまいます。
野心
これも、なんだか懐かしい響きを帯びて感じられるようになってしまいました。
野心を持つ、野心に燃える、あの人は野心家だから…ほとんど死語に近いようなニュアンスがあります。
野心に燃えている人がいるとしたら、新鋭のIT企業の経営者か、世界を飛び回って企業買収を行う事業家くらいであって、すぐ身近にいる地に足の着いた野心家という存在が消えてしまいました。
私は古い人間なのかもしれませんが、どうにもこのようなインターネット上のビジネス、あるいはお金に幅を効かせた事業にはいまだにアレルギーを感じてしまいます。
地道な努力、確かな技術、積み重ねたノウハウ、長年をかけて築いてきた信用、日々の研鑽から生まれたアイデア…などの上に野心が育つべきだと思うのですが、段々とその背景の重要性が消えていくように思われます。
その他にも、近頃すっかり聞かなくなった言葉を思い出すのですが、今回はこれくらいにしておきましょう。
なぜならば、こうして書いているうちに耳にしなくなった言葉は、同時に今だからこそ聞きたい言葉であることに気がついたからです。
こんな時代であるからこそ、希望や野心の話を聞きたいと考える自分がいます。
僕はこうありたい、私はこんなことをしたい、僕はこれを目指しているんです、私はこれを実現したいんです…そんな言葉を目を輝かせて語ってくれる。そんな場や若い人々に出会いたいと思います。
やはり、どんな時代にも夢や希望や野心は、明日へと我々を導く原動力となるからです。
求む、夢や希望を語る人
そして、私自身もきちんと前を向いて、希望や野心を胸に抱いて今日を生きる経営者であらねばと考えます。