命のために籠る初夏

ですが街には人気がなく、高速道路に数珠つなぎの車も見られず、観光地も静まり返って、異例の連休の幕開けとなっています。そうして叫ばれるのが、ステイホームと自粛しましょうの合い言葉。
かく言う私も、休日は自宅、平日は会社の一室に閉じこもっての自粛生活となっています。
なにしろ東京都と神奈川県を合わせた感染者数が4月末現在で5000人近くになろうとしている昨今です。スーパーに出かけるのも恐る恐る、会社に来てもなるべくスタッフと会わないようにして連絡は電話、会議はウェブテレビで、お昼時にはテイクアウトランチを一人で黙々と食べてと、いかにして人と会わず感染リスクを抑えるかに終始した生活を送っています。
警戒と工夫のなかで
社内の様子も変わってしまいました。なにしろ政府の方針は「人との接触を8割減らす」です。
営業担当のスタッフは順番に休んでもらい、そうでない人も時短を心掛けて早めの帰宅を行ってもらっています。
当社の最寄り駅本厚木駅を擁する小田急線は、ここのところはかなり空いているのですが、それまでに満員の電車やバスに乗らなければならない人についてはマイカー通勤を解禁としました。
さらに社内での感染を防止すべく、スタッフにはN95マスクを配布。そのうえで直にお客様と接する店舗では、消毒液を常備して来店の方には必ず手の消毒をお願いし、物件の現場案内となるとお客様となるべく同じ車に乗らないように工夫して…と、細かく感染リスクの低減に努めています。
一方で、今年入社したばかりの新入社員の教育も細心の注意を払って行っており、1ヶ月にわたる研修期間を経て、この5月からは配属部署も決まって、いよいよ本格的な業務が始まるところです。
過去の失策が教えること
そんななかで、私は会社のなかの部屋に籠りながら、はてさてと考えています。
今はとにかくこの危機をなんとか生き延びることだけを考えているわけですが、これが収束した後~それが半年後なのか、一年後なのかはわかりませんが~その後に、企業としてはどの方向を向いて歩んでいけばいいのだろうか、と。
このような100年に一度の大きな危機の後には、世の中の価値観や暮らし方がガラリと変わると言われていますが、その変わってしまった社会で、会社の価値観をどこに置き、どう動かして行けばいいのだろうか、と。
それよりも何よりもと、私は考えます。
現在不動産業界は、事業用賃貸物件の入居テナント様側からの賃料減額要求が増えに増えて、当社などは間に立つ身としてビルオーナー様への交渉で忙しいような事態です。オーナー様は、こんな時期だから痛み分けと称して減額に応じて下さっているのですが、これが長引けばオーナー様自身の銀行への返済に支障が出てくることにもなりかねません。
そこで思い出すのが、約30年前のバブル崩壊後の金融危機の頃のことです。あの頃、不良債権を山のように抱えて、誰もがこれでは銀行は持つまいと危惧していたのに、政府は腰が重過ぎて何もしなかったことを思い起こします。 もう本当にいよいよどん底になったところでやっと動き出したというのが現実で、それがその後の日本経済の30年にわたる低迷の一因になったと私自身は解釈しています。 あのときの泥水を飲んだ経験を忘れずにいたいと念じています。