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オートコールは是か否か

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オートコールは是か否か

~小さな、だが重大な我が社の出来事~

 7月上旬だというのに、連日厳しい暑さが続いています。
 今年は例年より二週間も梅雨明けが早いとかで、もう真夏の様相。カッと照りつける太陽に、早くも熱中症の心配をしなければならない事態となっています。暑さにうだっていては仕事にならないので、私自身はクーラーのなかに逃げ込む生活ですが、外の天気とは裏腹にこのところ私の心は晴れません。ジメジメ、シトシトの梅雨の空模様を引きずっているような感じで、どうにもすっきりとしないのです。
 と、いいますのも…

 我が社には、各部署ごとの垣根を取り払って独自の活動を行う委員会が、6つ存在することは以前お話しした通りです。社員同士の交流を目的としてイベントを企画する委員会や、年間を通じたリクルート活動を推進する委員会などがあるのですが、そのひとつに「業務効率向上委員会」というものがあります。社内業務全般の見直しを試み、改善を行う委員会で、会社側に自由な意見を提示する責任と権限を与えられています。
 いつもは素晴らしい提案がどんどん出てきて、なるほどそういう手もあったのかと感心させられることが多いのですが、今回だけはあれっと思いました。
 というのも、我が社の代表電話を6月末からオートコールにすることを決定しました、と言うのです。
 オートコールというのは、電話をかけたら自動音声に切り替わって、恐れ入りますが、○○にご用の方は何番の番号をプッシュしてくださいとやられる、あれのことです。実は私はあれが大嫌いです。電話をかけて生身の人間ではない声が出てきたら、がっかりします。そして、向こうの機械の言うことをじっと我慢して聞く。自分の要件が何番に当たるのかわからず、いらいらします。結局、目当ての人と話し始めるまで2、3分はかかってしまいます。わざわざ電話をかけてきた人を、軽んじている実に不親切なシステムのような気がして、どうにも好きになれないのです。
 それを、我が社も採用することにしましたと、こういうことなのです。
 私は委員会のメンバーに向けて今しがたの持論を展開し、しかし折角社員たちが決めたことなのだから、同意すべきと考えました。ただし、お客様やオーナー様に迷惑がかからないように、各部署ごとの直通電話番号をしっかりとお知らせするようにと指示を出しました。
 そこまではよかったのです。
 なぜオートコールにしなければならないのか、その理由をきいて唖然としてしまいました。
 委員会の報告では、代表電話制にしておくと電話をとる人が特定の人に限られ、いつも同じ人が電話に出るという不公平な状況を解消したいという意見が出たので、と言うのです。
 こんな内向きの理由からオートコールの道を選択したと聞いて、私は呆れてしばらくものが言えませんでした。

 これに関して私の言いたいことは、次の二つです。
 まずは、どこを向いて仕事をしているのかという基本スタンスの問題です。
 改善するのはお客様の利便性とサービス向上のためというのが本来の姿であるべきなのに、社内の事情のための改善になっています。お客様のほうを見て仕事をしなければならないのに、社内や仲間のほうを見て仕事をしています。
 それは違うだろうと、私は言いたいのです。
 そして二つ目は、協調性とチームワークの問題です。
 私はちょうど一年前の本部事務所移転の際に、広いワンフロアに全部署を集約させることで、部署間の理解が深まり、コミュニケーションがスピーディになり、かつ、困っている人がいれば部署の垣根を越えて互いに助け合えることを目標としました。当初はそれが上手く機能しているかのように見えていましたが、時を経るにつれて相反する方向へと流れる潮流が出てきて、まったく逆の現象に見舞われるようになったようです。
 自分のことだけでなく、みんなで助け合って仕事を進めていく。そこが目指すべき姿なのに、多忙を理由に誰もが利己的な視点からモノを見始めています。
 これは、ちょっと恐ろしい傾向です。
 企業が凋落していく原因のひとつは、この気付かないうちに進んでいく方向性のズレにあると思われます。どの企業も気高い理念を持って企業活動を行っているのが、時を経るうちに、または規模が大きくなるうちに、その理念から逸脱した社内の力関係や理論が幅を利かせるようになってくるのです。これは危険な兆候で、経営者としては軌道修正に乗り出さなくてはなりません。
 いま一度、基本に立ち返り、改めて企業理念を心に刻み直す必要があります。
 この世のあらゆるものは、時を重ねるうちにいつのまにかサビや垢を身にまとうようになります。そのサビや垢にいち早く気付いて、再び原点から歩み始めることがとても大切だと思うのです。

 ときは、本部事務所移転一周年。リフレッシュして、また新しく歩み出すのに最適な時期となりました。

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