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本当に傾いたものは

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本当に傾いたものは

 秋もたけなわの11月となりました。

 なのに夏を思い出させる汗ばむ日が続いたり、一方ではいち早く北の国から初雪の便りが届いたりで、今年の秋は場所による格差が顕著なようです。

 そんななか世の中を騒がせているのは、大手不動産会社が販売したマンションの「傾き」問題です。

 その問題の裾野がどんどん広がり、しばらくは収まる気配もありません。

 

 そもそもなぜこんな問題が発生したのか。

 報道によりますと、2005年着工、2007年完成のこのマンションの傾きに住民側が気がついたのは、約1年前だということです。そこで販売会社にその旨を申し入れてみると、会社側の説明は「傾きは東日本大震災によるゆがみ」とのこと。これに納得がいかない住民側が管轄の市に相談し、市が独自にポーリング調査をした結果、工事不良が発覚してこの騒ぎになったというわけです。

 それからは連日テレビのニュース番組を賑わす大問題となってしまいました。なにしろ日本を代表する大手不動産会社の不手際です。経営陣が記者会見を開いて頭を下げ、基礎を支える杭打ちが不十分だったとして下請けの施工会社が出てきて陳謝し、さらにその杭打ちのデータに改ざんがあったとしてその親会社まで出てきて涙ながらに謝る事態になりました。

 これからこの杭打ち会社が施工した日本全国に存在する建築物のすべてを調査するということで、この問題はこれからどのくらい広がっていくのか予測もできません。

 一方で、件のマンションの傾き問題に対しても、その対処について道筋がつかないままです。不動産会社は4棟全705戸の建て替えを行う、もしくは買い取るとしていますが、高額な買い物をした顧客に対して誠意がないとして住民側の不信感は募るばかりです。

 

 この問題には、日本の不動産業界が抱える構造的な事情が大きく影響しています。

 不動産会社が事業を発注してグループ企業の建設会社がこれを請け負い、これをさらに別の下請け企業が担当し、工事内容別にまた別の下請け企業に業務を発注するといった重層的な構造では、工事全体の状況を把握することは困難を極めます。さらに近年の工事は細分化されたうえに専門性が高まり、トラブルを見つけにくくなっています。そのうえ工事日程は絶対に遅らせてはならないといった「工期厳守主義」も、問題発生の温床となってきます。

 数多くの企業が複雑に絡み合うこんな状況ですから、いざ問題が発覚すると大混乱に陥ってしまいます。

 

 この問題に対する私の意見はこうです。

 まずは販売元である大手不動産会社が、住民側からクレームの発生した昨年11月の段階で誠実に対応するべきでした。そうして真っ先にミスを認め、販売した全戸を時価で買い上げて建て替えする旨を伝えるべきでした。さらに、建て替えに伴う移転先の物件探しや引っ越し費用などこれに付随する全費用を補償し、なるべくご迷惑をかけないようにあらゆる面から住んでいる方のサポートを行うと発表するべきでした。

 そうすれば「さすが○○不動産、最大手だけのことはある」「トップブランドのマンションを買ってよかった」という評価となり、顧客の信頼とブランドイメージは維持できたはずです。これに伴う損失は巨額でも、こうすれば逆に信頼感が増し、将来的な収益には結びついたはずなのです。

 お客様は今回ミスを犯した企業と契約したわけではないのです。この不動産会社の販売するマンションを、この会社なら間違いないだろうと信頼して、高額の金額を工面して購入したのです。いちばん忘れてはならないのは、そんなお客様のことなのです。

 

 このことは、私たちの企業でも同じことです。

 何か不都合が起こったときにまず行わなければならないのは、責任の所在の追求ではないのです。

 クレームを受けたときには、なにはさておき真っ先にお客様のもとに駆けつけなければならないのです。そうして、真摯にお話をうかがうことです。そこから誠意を持って最大限の対処を行っていくことが、何より大切なのです。

 ミスや過ちに対して心を込めて対処すると、お客様は逆にわれわれの「ファン」になっていただけます。そこまでの努力をするべきなのです。

 今回の一件でも、大手不動産会社はトップブランドの意地をかけて、そのように対処するべきでした。傾いたのはマンションではなく、本当は信頼というもっとも大切なものだったのです。

 

 「お客様を見て仕事をする」という基本のきを忘れず、われわれも日々を送っていかなければと思っています。

 

 

 

 

以下は資料です

傾きマンションに業界関係者 「意図的であり犯罪的」と断罪

NEWS ポストセブン 1024()166分配信

 

「去年の夏、玄関のドアからきしむ音が聞こえました。なんだろなァと思っていましたが、まさかこんな事態になるなんて」(50代男性)

 

「建て直すといわれても、仮住まいが学区外なら小学生の子供を転校させなきゃいけない。また完成したら戻ってきて再転校でしょ? できれば建て替えはしてほしくないです」(30代主婦)

 

 傾いていることが発覚した横浜市都筑区にある4棟建ての大型マンション『パークシティLaLa横浜』の住民はこう困惑を隠さない。

 

 JR横浜線鴨居駅から徒歩10分。飲食店や衣料品店、映画館が入る『ららぽーと横浜』に隣接する高級マンションだ。200511月に着工し、200712月に完成、築8年経った今でも人気物件だった。「利便性が高く、資産価値が下がらないということで頑張って買った」(40代男性)という住民も多かったが、今回の騒動は彼らの人生も大きく変える一大事になってしまった。

 

 マンションの「異変」を住民が感じたのは昨年11月だ。傾いた棟と他の棟をつなぐ渡り廊下の手すりが約2cmずれていることに気づき、事業主の三井不動産レジデンシャルが調査したところ、建物の両端で高さが最大2.4cmずれていることがわかった。

 

 ところが、事業主は「東日本大震災で生じたひずみ」と説明するばかり。不信感を募らせた住民は横浜市に相談した。そこで、ようやく棟周辺のボーリング調査が行われ、工事不良が発覚した。

 

 施工業者の旭化成建材によると、マンションの杭約470本中の70本について、地下数十メートルの「支持層」と呼ばれる固い地盤に届いていなかったり、杭を支えるセメント量をごまかしていたなどのデータ偽装が行われていたという。大手マンションディベロッパー幹部が言う。

 

「旭化成建材は杭70本のデータを偽装したのは、『現場代理人』と呼ばれる責任者の1人だと説明しています。この責任者は正社員ではなく非正規雇用だったようです。杭が硬い支持層に届けばガツンという衝撃があってすぐわかるはずなので、今回、到達させなかったのは意図的であり、犯罪的な行為です。

 

 一口に杭を打ち込むといっても簡単ではありません。深さ十数mから100m以上の地中に打ち込むと、杭が曲がったり、折れたりすることが多い。経験豊富な現場責任者ならば上手に杭を打ち込めたり、1本が到達しなくてもその周囲の杭で安全に支えられるように計算して打ち込めるが、キャリアの短い責任者ならうまくいかない。

 

 たくさん打ち直しが必要になり、工期も長引き、建設費も余計にかかることになる。だから、会社から工期を間に合わせろ、経費を抑えろと要求される現場責任者がデータを改竄して、支持層に届いているように偽装したのでしょう」

 

 事業主は住宅の買い取りやマンションの建て替え、その間の仮住まいの費用負担、精神的負担への補償などを検討するというが、それを行うのも簡単ではない。全国紙社会部記者が言う。

 

「全棟の建て直しを行うなら、全棟705戸の5分の4以上と、各棟の3分の2以上の同意が必要です。施工不良が確認されていない棟の住民はそのまま住み続けたいという希望も多く、住民の意思統一はとても難しい。いざ建て替えるにしても、会社側は『少なくとも3年半かかる』としているので、問題の長期化は避けられません」

 

女性セブン2015115日号

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