一年遅れのオリンピック

連日気温35℃近くの猛暑が続いています。
しかしながらテレビをつけると、その炎天下で一心にラケットを片手にコートのなかを走る人が写し出されていて、いやはや真夏のオリンピックというのは大変だなと考える日々です。
厳しい世論の批判が集まるなかで開催されたオリンピックも、全日程の半分を終えて8月となりました。
緊急事態宣言下の五輪開催
振り返ってみると、オリンピック開催の延期が決まった昨年春には、「新型コロナウイルスに人類が打ち勝ったその象徴として、来年夏にオリンピックが開催される」ということを政府は語っていました。
あれから一年が経ち、人類は依然としてウイルスに翻弄され続けています。マスクをつけたままでの生活が続き、自由な移動の自粛が求められ続け、新しく登場した変異ウイルスであるデルタ株の猛威に怯えながら、日々を過ごしています。頼みの綱のワクチンも供給スピードがお話にならないほど遅く、いつになれば安心できるレベルまで接種が行き渡るのか、まったく見通せません。そこに追い打ちをかけるように届いてくる、国内感染者数激増のニュース。
そんななかでオリンピック聖火が灯り、複雑な気持ちで見守るわれわれに、金メダル獲得の速報が流れてきます。
すると、現実の不安をしばし忘れ、スポーツの世界へと心が泳ぎ出していきます。
スポーツがもたらす文句なしの感動
開幕早々から柔道の金メダルラッシュに、スケートボードやサーフィンなど新競技での金・銀メダル獲得、競技として復活した女子ソフトボールでは悲願の金メダルに輝き、見ているこちらももらい泣きしてしまいました。
日々努力し、研鑽を積んできたアスリートたちの奮闘する姿には、文句なく感動させられます。そして、勝利を手にした瞬間の輝くような笑顔とあふれる涙。
その姿を見ていると、コロナもワクチンもどうでもよくなり、ただ嬉しさと感動だけが広がってきます。
この困難な世の中にあって、まるで我々を励ましてくれるかのような彼らの頑張りぶりです。なんとまあ、スポーツというのはすごい力を持っていることでしょう。
困難と挫折のなかでの偉業
世界的なウイルス流行の影響を直接受け、さらに関係者の辞任が続き、史上初の無観客開催で、東京オリンピックは呪われているという言葉は何度も聞きました。
なぜよりによって、日本がこんな目に遭うのだろうと心のなかで嘆いていたものです。
そんな思いをくつがえす日本人選手の活躍に、やはり母国開催というのは大変なパワーを持つのだなと感心させられました。
世界で最も苦労して、そうして世界で最も歓喜に沸き立つのが、2020年オリンピックの開催国であるということだと思います。
アスリートの皆さん、感動を本当にありがとう。
スピードに乗る時代の流れ
一方で、金メダルは確実と言われた選手たちの思わぬ敗退も、印象に残りました。誰もがしのぎを削り、一分一秒一技を競う世界は、それだけ厳しいということでしょう。
その戦いぶり、その努力には、改めて惜しみない拍手を送りたいと思います。
また、スケートボードパーク競技女子の13歳の金メダリスト誕生には驚くとともに、対比的に我が身の老いを感じました。軽々と滑っていき、飛んで跳ねて、まるで遊びのようにエンジョイしてメダルを獲得していく姿は、解説を務めるスケートボーダーの「チャラい」言葉も相まって、時代の流れを感じたものです。
大御所が思わぬ敗退で涙をのむ一方で、新しいヒーローやヒロインが彗星のごとく誕生し、まるで早回しフイルムのように時間が動いて、このオリンピックも後半戦です。市中の感染者がこれ以上増えないことを願いつつ、残りの競技を楽しんでいきたいと思います。