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NISHIDA
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英国EU離脱と我々のこと

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英国EU離脱と我々のこと

 雨の少ない梅雨期も中盤へと移ってきました。

 このところ世間を騒がせているのは、6月末に行われた国民投票を受けての英国のEU離脱問題です。

 EU離脱はないだろうと誰もが安心していたところで、蓋を開けてみるとなんと微差でのEU離脱派の勝利。いちばん驚いたのは英国民だというから、それこそ驚きです。

 「不満票のつもりで入れたんだ」「まさか本当に勝つとは」街からは戸惑いと後悔に満ちた声が聞かれ、再投票を求めて署名活動が始まる混乱ぶり。そうこうしているうちに、スコットランドが独立を宣言し、ウエールズも手を挙げて、さらにはロンドンまで「英国離脱」を検討し始めてと、事態はどこまでも混迷を極めてきます。遥か遠くで暮らす我々も無関係ではいられず、株価は下落し、英国に進出している企業は今後を考えて動き出すという事態になっています。

 さらに私が目を丸くしたのは、EU離脱が決まってから初めて英国人が「EUって本当は何なのだろう」と、一斉にインターネットの検索を開始したという事実です。つまり、EUから離脱するとどうなるのか深く考えもせず、軽い気持ちで一票を投じてしまったようなのです。

 

 この一連の動きを傍観して、イギリスはなんて間抜けなことをやっているんだろうと冷笑する声があちらこちらで聞かれましたが、私はこれを別の角度から見ている人間のひとりです。

 今回の一件は大変なことなのですが、似たような現象が今や世界各国で起こっており、日本も近い将来に同じようなことになるのではないかと危惧しているのです。

 その代表例がアメリカで、「Build the wall~メキシコ国境に壁を作ろう~」をスローガンに掲げるトランプ氏が共和党の大統領候補に選出され、クリントン前国務長官と選挙で戦うという考えもしなかった事態が、現実となっています。本来ならば、党内の代表者選びの段階で消えていくべき人物です。

 トランプ氏台頭の定義づけとしてポピュリズムという言葉がよく聞かれるようになりましたが、国民に目の前の利益だけをちらつかせて人気を集めていくという行為は実に危険極まりないもので、かつてヒトラーが登場した時の世界を連想してしまいます。彼もまた同様の手法で大衆の人気を集め、全世界を戦火に陥れることとなりました。

 

 そんななか、日本はどうでしょう。

 トランプ氏に相当する人が見当たらない現況でポピュリズムを心配する声は上がらないのですが、似たような状況にあると私は思っています。つまり、深く考えずなんとなく一票を投じてしまう傾向は、私たちの国にもあるからです。

 我が国ではまもなく参院選が実施されます。今回から選挙年齢が引き下げられるとのことで、未成年である十八歳の国民が初めての一票を投じることが期待奨励されています。ところがどうでしょう。候補者や各政党は一方的に都合のいい言葉を並べるだけで、有権者は冷静な判断を下しようもありません。選挙権を与えるだけ与えて、その判断検討材料が提供されていないのが、今の日本です。

 そうしてテレビをつけると、連日お笑いやバラエティの軽薄な番組ばかりが目に飛び込んできます。なぜこの時期に、テレビを通じて政治家ではない専門家がいろんな角度から国の現況を解説し、われわれがこういう選択をすれば国はこうなっていき、他方を選べばこうなっていくという示唆を行ってくれないのでしょうか。

 EU離脱で慌てふためく英国のことが笑えないと、つくづく私は思うのです。

 

 現在、日本の抱える財政赤字は1000兆円を超えています。そんななかで未曽有の少子高齢化時代に突入する日本。福祉の問題は未解決のまま、国民の格差はどんどん広がり子供の貧困率は高まるばかり。自殺者は一向に減らず、もはや人身事故のために電車もまともに運行されない事態となっています。

 危機的状況にあるのに、なんとなくしか投票できない我々

 こんな現況を憂う声が大きくなっていくことを期待してやまない七月です。

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