アンバランス号はどこへ行く

例年になく長い梅雨が終わったと思うと、都知事選も終わって暦は八月。
今年は四年に一度のスポーツの祭典、オリンピックが開催される年。南米初開催となるリオデジャネイロ夏季大会がまもなく始まります。
ところが、オリンピックというワクワク感に水を差すように、現地の治安の悪さや選手村の欠陥ぶりが報道される異常さ。さらに、イスラム国と関係のある人物の逮捕のニュースなども伝わってきて、果たして無事に開催されるのだろうかと、不安感が先立つカウントダウンとなっています。
世界をいま席巻しているのはテロの連鎖反応と貧困、紛争の問題です。これらによってさらに世界での格差が広がり、豊かな国に大量の難民が押し寄せてくる。それによる「ひずみ」が、多様な問題を引き起こしています。
一方で我が国はというと、景気は上向いていると言われながら、その実感がまったく感じられない状況が続いています。
少子化も後押しして、あらゆる産業が縮小化してきており、街には活気というものが損なわれてきています。
これではだめだと、行政を巻き込んでの駅前再開発事業に私たちも非力ながら参加させてもらっているのですが、小田急本厚木駅南口での活性化の核となる複合ビルの建設がやっと具体的に動くところまでになりました。ところが、建設業者の入札という段階になって驚くべきことが待っていました。なんと、大手建設業界は四年後の東京オリンピックを見据えてバブルの様相にあり、仕事が多過ぎて、入札に二の足を踏む企業があるというのです。この業界ばかりが過度の好景気にあり、他は冷えきっているというバランスの非常に悪い状況にあります。
また一方で、世の中の「進化」というものに目を向けると、ITの分野がさらに進んで、自ら学んで学習していく技術を持った人工知能(ディープラーニング)が、あらゆる分野に応用されつつあります。車には自動運転機能が搭載、SNSの会話も人工知能が担当して生身の人間の上をいく会話ができるサービスまで出てくる始末。まるでコンピュータが人間の知性と感情を持ってしまったかのようです。
さらに、インターネットのさらなる浸透も進んで、ありとあらゆる人がアプリやサービスを開発し、さらに便利な世界が出現しつつあります。私たちの業界に近いところを取り上げると、たとえば部屋を貸したい人と借りたい人をマッチングさせるサービスから、自動車を貸したい人と借りたい人をマッチングするサービスまで登場して、今まで企業の独断場だったビジネスを席巻する勢いです。
そんな劇的な「進化」の一方で、障害者施設に忍び込んで障害者だからという理由で殺害に及ぶという、野蛮このうえない、「進化」と真逆の位置に立つ事件が発生したりします。
一方で進化がものすごいスピードで進み、他方でその逆のベクトルに人間が突き進む……。ひとことで言って、世の中がとてもアンバランスなのです。
さてそんな進化と不安感を内包したゆがんだ世界のなかで、私たちはどうやってビジネスを展開していけばいいのか、経営者としては大変に悩むところです。
果たしてどんな未来図を描けばいいのか、どの方向に舵をとればいいのか。実はそこが見極めにくく、腕を組んで考え込んでしまいます。
これまでも将来については不安な要素も多かったはずなのですが、どうも今までとは違う…。おそらくは大きく世の中が変わる転換点にあると思うのですが、バランスの悪い世界のなかでどうやって生き抜いていけばいいのか。
しかしもちろん、逆の見方をすれば今までとは異なるビジネスのチャンスが生まれているのだと言うことができます。あっという間に変わっていく変化の激しい世界のなかで、明日への道を探りながら進んでいくしかなさそうです。
今こそ、スタッフ全員の英知とチャレンジ精神を総動員して、失敗を恐れず新しい仕事を生み出していかなければなりません。
アンバランスな海を勇猛果敢に走り抜ける船のイメージを描きながら、次へのステップへの模索が続く夏です。