新時代の幕開けに イチローから学んだこと

桜の花が満開を迎えて、我が国では1ヶ月後から始まる新しい元号が発表されました。
平成のときもそうでしたが、初めて目にする元号はどうにも馴染まないものがあります。
ですがいずれにしても平成と別れを告げ、新しい時代が始まるのだなという感慨が迫ってきます。昭和から平成へと移って世の中の空気がガラリと変わったように、大きな変化の節目にあるのだと思います。
新しい時代は、どんな色合いを帯びているのでしょうか。ワクワクするような、それでいて不安なような、まるで新入生か新社会人のような気持ちになっている自分に気が付きます。
ただひとりだけの道をゆく
そんななか、先日とても印象深い出来事がありました。
それも平成の時代の最後の事柄として記憶されていくのかと思うと、切ないような勿体ないような気分になります。当日は、テレビを見ながら涙した人も多かったものと思います。
というのは、3月21日にメジャーリーガーのイチローが、ついにプロ野球の第一線から引退することになったという出来事のことで、その日のうちに本人出席での引退会見が行われテレビで中継されました。
イチローというと、27年間日米の第一線で活躍し続け、数々の記録を塗り替え、7つものギネス記録を打ち立てた「誰にも真似のできない唯一無二」のスーパースターです。
思い返せば、高校を卒業して4位指名でオリックスに入団し、振り子打法でバッターボックスに立ったものの、周囲から痛烈な批判を浴びて、1軍と2軍を行ったり来たりの状況が長く続いていました。そんななか仰木監督だけが理解を示して2番打者に指名してくれ、そこからご存知の通りのヒーローにのし上がっていきます。
信念と強い精神力と
2000年からは活躍の舞台をメジャーリーグへと移し、独特のスタイルで数々の記録を打ち立てていきますが、当初はやはりパワープレーを常識とするアメリカのファンからは受け入れられず、「日本に帰れ」と罵声を浴びせられたことを会見では告白していました。
その言葉を聞きながら、ここまで彼を導いてきたのは、そのずば抜けた頭の良さと精神力に他ならないのだなと再認識しました。
誰もやらないことを、コツコツとやり抜く強さ。もし、間違っていたらそれこそクビになってしまう厳しい世界にいながら、研究を重ねて独自の信念を打ち立て、それに従って毎日努力を重ねていくその強さ。
マリナーズの監督に言わせると、チームのなかでも彼は決して群れず、打ち上げなどにも顔を出さない「孤高の人」であるということです。
そんなたった一人の世界に身を置いて、自分の考えに従って黙々とトレーニングを続けるすごさ。すでに数々の大記録を樹立しているにもかかわらず、そこに満足することなく、さらに上へ上へと目指していく超人的な精神力。
こんな人が世の中にいるんでしょうか。見ているこちらは、只々ため息をつくばかりです。
不動産テックの潮流のなかで
その偉大なスーパースターの言葉を聞きながら、私は自分のことを省みてみたものです。強い信念と精神力。果たして自分は、そんな研ぎ澄まされた生き方をしているだろうか…と。
いま、不動産業界はかつてない試練の時代を迎えようとしています。
まずは、これから少子化と超高齢化がますます進行し、市場は確実に小さくなっていくことが予測されています。そのうえで近年深刻になってきているのが、人材不足の問題です。これを踏まえて、業界としてはIT技術を最大限に活かして効率化し利益率を上げようという不動産テックへ舵を切っているところです。
これまで人間が時間や足を使って地道にやってきたことを、テクノロジーでカバーしてコストダウンを図ろうということで、どの企業もその方向へと傾いてきているところです。
ですが、そこには手堅い「守り」の態勢があるだけで、新しいものを切り拓いていこうとする前向きさは感じられません。
この大きな流れのなかで、イチローだったらどういう発想をするのだろうと、私はふと考えてしまいました。
新時代を切り拓く一筋の光
彼ならどんな分野でもおそらく研究に研究を重ねて、誰も思いつかなかった道、やろうとしなかった道を探し出すに違いないと思うわけです。
そうして、これと決めたら日夜努力を続けて、かならずや結果を出すまで力を尽くすであろうと考えます。
他と同じではだめです。独自の道を歩まねばならないのです。
つまり、この逆流のなかにあって、「これだけは他にはない」「これだけは誰にも真似できない」という唯一無二の道を求め、力強く進んでいかなければならないのでしょう。
その唯一無二さこそが、縮小化していく未来のなかでただひとつの活路になるに違いないと思うわけです。
独自性という未来への鍵
折りも折り、世の中では新しい時代が始まります。
この「誰もやらないけれど、誰もやらないからこそ、我々がやる」という発想は、新しい時を切り抜けるためのキーワードになるのかもしれません。
これからやってくる時代に、ふたつとないユニークな存在として必ずや輝く未来を手に入れたい。そのために、唯一無二のものを探し求めたい。そう強く思う年度初めです。