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NISHIDA
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働き方改革という波

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働き方改革という波

 令和に入って2ヶ月が過ぎ、梅雨空のもと季節は七夕の頃へと移ってきました。
 今月は参議院選挙も行われるということですが、ここのところ私は働き方改革をめぐる疑問に心をとらわれています。
 この改革により社会は果たして良い方向へとシフトしていくのだろうか、従来から抱えていた問題がこの改革によって本当に改善されていくのだろうか、という疑念が頭をもたげて、思わず考え込んでしまわざるをえないのです。

今日することが今日できない

 働き方改革の骨格となるのは、
長時間労働の解消
非正規と正社員の格差是正
高齢者の就労促進
3つの柱です。
 このうち、長時間労働の解消の命を受けて、われわれは目下残業を減らすことに必死です。
 かつてとはガラリと様子を変えて、早く帰ってくれ、どんどん休んでくれと管理職が社員たちの間を言って回り、後ろ髪をひかれながらも誰彼とオフィスを後にしていく日々が続いています。
 日本の長時間労働が国際的にも問題となって、2013年に国連から「長い勤務時間が、過労死や精神的なハラスメントによる自殺やうつ病の原因となっている」ことを理由に是正勧告を受けたということも承知しています。これに関しては、まさにその通りだと考えます。
 ですが、一方でこの規制のおかげで企業の収益性が極端に落ちてしまうことは、目に見えています。なにしろ、今日していたことを明日に延ばさざるをえないのですから、企業としての生産性はぐっと落ちてしまいます。

揺らぐサラリーマンとしての生き方

 社員としてはどうでしょう。
 働き方改革によって、早く帰られて嬉しいという人がいる一方で、残業したいのにそれができずに困る、という人が数多くいるのも事実です。バリバリと働きたい人にとっては、残業が制限されることで収入が減ってしまうというのが大問題となってしまいます。
 あるシンクタンクの試算によると、残業規制によって個人に支払う給与が日本全体で5.6兆円減少しているそうです。1人当たりにすると月7万円で、基本給だけでは足りないと考えるサラリーマンは60.8%に上るとされています。その影響で、住宅ローンが払えなくなった人が急増しているというのです。(
 これでは、誰もが今までの収入を確保したいがために、副業、アルバイトを始めざるをえないということになってしまいます。ウィークデーは会社で働いて、週末は別の仕事で稼ぐというスタイルが当たり前となってしまうことになります。
 国民に休んでもらうために改革を始めたのに、逆に休日も休めなくなってきてと、何のための制度かわからなくなってしまいます。

形だけのゆとりが生む変化

 企業側も考えを変えなければなりません。
 従来通りのやり方で収益を確保していくことは難しくなりますから、勢いAI化を押し進めていくことになります。
 今まで人で補っていたものを、AIに頼っていくしかなくなります。
 これからどの企業もこの人材カット、AI化に傾いていくと思われます。
 もともと日本の労働生産性は大変低いとされていますが、誰もが休日限定のアルバイトなどを行わざるをえなくなってくるとなると、アルバイトで高賃金というのはまずあり得ない話ですから、労働生産性の向上はまた難しくなると思われます。
 さらに、そこに外国人労働者が流れ込んできて、彼らとともに汗を流してと、今まで見たこともない労働風景が出てくるに違いありません。
 いずれにしても、高賃金でゆとりある生活、そのなかで子どもを生み育てていくという理想からはどんどん遠くなってくるような気がしてならないのですが、どうでしょう。

 どの企業も高い労働生産性を有して、休日を、人生を、充分に謳歌できるような給与体系を持ち、働き甲斐のある仕事を集中的に行ってそんな理想が現実となるためには、どれくらいの時間と智恵と混乱が必要なのだろうかと考えるこの頃です。

資料NHK 514日放送「クローズアップ現代+」)

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