ライフワークの総仕上げ

温暖化の影響でしょうか、今年は梅雨前から大雨に見舞われる日もあって、6月の声にやっとカレンダーが追いついてきたかという印象です。
季節は一歩先に動いているものの、例の新型コロナウイルスのワクチン接種は遅々として進んでいないように感じられ、私のところにもやっと接種券が送られてきたものの、さてさて実際にワクチンが打てるまでには、あと幾山河を越えなければならないのだろうと、ため息をついている今日この頃です。
こんな状態でオリンピックが開催されるというのですから、なにやらチグハグな感じがします。
災いが内省をもたらす
一方で、今回のような災禍は、立ち止まって人生を考える契機にもなることを実感しています。毎日全国で100人ほどが、この小さなウイルスによって命を落としている現況です。自分もいつ何時感染して重症化し、(ワクチンを打つ前に)人生の幕を閉じなければならなくなるかわかりません。
そこで、自分はここまでどう歩んできて、どう世間の役に立ってきたのだろうかと考えることが増えました。
創業から44年を経てきましたが、もっともっと人の役に立つようなことができたはずだと後悔のようなものを感じるようになりました。過ぎたことは取り返しがつかないので、残り少ないこれからを見据えて、自社だけでなく、もっと広く地域の役に立つようなことをやって人生の集大成とするべきではないかとの思いにとらわれてきました。
とはいえ、私ごときでは実際にできることには限界があります。とても渋沢栄一のようなスケールにはなりません。やれることに誠心誠意で取り組んでいくしかありません。
変化が生き延びる鍵になる
そんななか、マスクを着用しながら人と会ったり、話をしたりしているうちに、自らの責務に思い至りました。
それは13年ほど前から私自身が関わり合いをもってきた本厚木駅北口の再開発プロジェクト、これをなんとしてもやり遂げなければという思いです。仕事としての損得を超えて、お世話になってきた厚木のために残りの労力を傾けていかなければと考えたのです。
ご存じの通り、本厚木駅南口については再開発が完了し、新しい魅力的な駅前が完成しました。
対する北口は、旧態依然としたままで数十年の時を数えています。古い商店街に老朽化したビル。もうずっと同じ景色が続いています。
変わらないのがいいという意見もありますが、いいところは残して、新しい要素を加え、魅力的なものに再生していくことは、街に限らず、人でも国家でも物でも大切なことだと思います。何も変わらないという状況に、進歩はありません。
大勢の方が関わり、多くの意見があるプロジェクトだけに、推進には大変な労力が必要となります。今までに何度となく再開発の動きが出ては頓挫を繰り返している難事業ですが、厚木市においても全力をあげて活力ある街に再生しようと努力しています。
そして、私も微力ながら恩返しの気持ちを込めてお手伝いしていきたいと思っています。
誰もが幸せになるために
厚木のこの動きに影響されたのか、隣接地域である伊勢原市でも駅前の再開発の動きが出てきていると聞いています。コロナ禍のなかであっても、前向きな動きは大きなプラスの波紋を周囲に広げていくのだということを感じます。
翻(ひるがえ)って、わが街のことです。
神奈川県の県央エリアの中核都市として、厚木は大きな潜在力を持っています。
昼間の人口が夜間の人口を上回り、多くの企業がオフィスや研究所、または工場を構え、大学も有して若い世代が数多く暮らしています。
自然が豊かで都心へのアクセスも良好であるために「借りて住みたい街ナンバー1」に選ばれたからには、さらに魅力をプラスして「暮らしても楽しい街」に進化させようではありませんか。
それが、ここに暮らす人々の利益となり、地権者の方々の利益となり、結果的には企業の利益となれば、これに勝る幸せはありません。
地域への最後の恩返し
前出の渋沢栄一は、何よりもまず万人の利益になることを考えて仕事をしたと伝えられています。
私もその思いを胸に、ライフワークの総仕上げとして、この再開発プロジェクトに関わりたいと思っています。