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NISHIDA
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日本の本気

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日本の本気

 七月は七夕の季節なのですが、梅雨のどんよりした空の下で連日最高気温が30度近い日が続いて、この季節はこんなに暑かっただろうかと考える毎日が続いています。

 そんななか関東地方の梅雨入りが発表された6月末日に、遠く九州は熊本県菊陽町まで出かけてきました。

 地元厚木市の商工会議所主催の現地視察で、台湾を本拠地にしている噂の半導体工場とそれを受け入れたエリアの様子を見に行ったのです。そうして、ただただ驚いて目を見開いた状態で帰ってきました。



九州に出現した大プロジェクト

 実を言うと、現地に着くまでは半信半疑の心境でした。

 現在、国内では建築関連のスタッフが思うように集まらず建設価格がうなぎ上りの状況にあるのは、皆さんご存じの通りです。そのわけは、九州の半導体工場建設と大阪万博、そうして東京駅前の再開発に職人を取られているからだと聞いていましたが、そんなことがあるのだろうかと考えていました。

 そうしていざ現地に着いてみると、想像をはるかに超えるスケールの半導体工場が完成しており、さらに第二工場の建設まで始まっていて、その規模たるや度肝を抜かされてしまいました。

 なにしろ半導体の世界最大手TSMCの日本工場です。投資額は1兆2900億円。うち政府が4760億円を補助しているというのですから、国を挙げての大プロジェクトです。

 TSNCの進出に伴って、おびただしい数の企業も進出してきています。すぐ近くではソニーの巨大な半導体工場が以前から稼働しており、さらに東京エレクトロン、バイクの製造部門を持つホンダ、富士フイルムまで進出して、この工場ラッシュはどこの国の光景だろうかと目を疑うばかり。

 今回のTSMCの進出による経済効果は非常に大きく、第二工場が建設された暁には、熊本県だけで10兆円、九州全体では20兆円に及ぶというのですから大したものです。

 そこに、衣食住の各企業が集まって、立ち並ぶマンションに軒を連ねる外食産業、ドラッグストアに各種専門店、ホテル…ありとあらゆる企業が進出して、まさにかつて見たバブルの活況です。



最先端の技術と環境配慮と

 開所したばかりのTSMCの工場には入ることはできなかったのですが、ソニーの半導体工場には同社が厚木市に研究所を置かれているご縁もあって見学するご好意を得られました。

 これがまた驚くべき工場で、人っ子ひとりいない巨大なクリーンルームでおびただしい数のロボットが黙々と製品を作り上げていく様子は、まさに近未来の世界を眺めているよう。最先端をこの目で見て、目が覚める思いをしました。

 ついこの前までは田畑が続く地方の一町に過ぎなかった菊陽町ですが、ここが半導体産業の拠点として選ばれた理由は、水にありました。世界一の大きさのカルデラを持つ阿蘇山から生み出される豊富な水資源が、多量の水を必要とする半導体の生産には不可欠とのことで、白羽の矢が立ったそうです。

 見学したソニーの工場では、使い終わった水はそのまま捨てるのではなく、綺麗な状態に戻して流していると聞きました。その環境に配慮しながらモノづくりに取り組む姿勢に、さすがは世界の一流企業だと今さらながら感嘆してしまいました。



日本の製造業の巻き返し

 今回の視察で感じたのは、日本の本気度と製造業のダイナミズムです。

 GDPの世界ランキングが4位へと後退し、来年にはインドに抜かれて5位になるというニュースに、縮みゆく未来図を描いていた私ですが、なんのなんの官民が一体となって本気で取り組む姿に、まだまだ成長していけるという確信を得ることができました。

 かつては世界一のシェアを誇った日本の半導体です。時代に取り残されていった悔しさをバネに、再び世界をリードする存在へと大きく羽ばたいていってくれることと思います。

 さてさて、従業員は台湾からのスタッフを含めて1700名が採用されているというTSMC熊本工場ですが、新卒採用者は東京の大手企業より初任給が5万円高いと聞きました。なるほど優秀な人材はこちらに流れるはずだと納得した次第です。

 帰り際に、おびただしい数の建築現場で働いている若い職人の方に声をかける機会がありました。一体どこから働きに来てるの? の問いかけに、返ってきた答えは横浜とのことでした。

 やられたなあとおもわず呟いてしまい、これこそが日本の本気そのものなのだと思った次第です。

 われわれも本気を出せばやれるはず。本気になって取り組むことで、明日が拓けてくるはずという思いを強くした視察でした。

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