消防法の用途変更の対策と注意点

防火対象物の種類
まずはどんな用途のテナントが設置基準が厳しくなるかの業種は下記でご確認ください。建物の規模でも設置基準は変わりますが今回はテナントに焦点を当てた視点となります。特定防火対象物 | 用途:集会場・遊技場・飲食店・店舗・旅館・ホテル・ 病院・診療所・幼稚園・福祉施設等、 主に不特定多数の者が出入りする建物 |
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非特定防火対象物 | 用途:事務所・アパート・学校・図書館・工場・倉庫・神社等、主に特定用途以外の用途としており、 出入りする人が限られ、避難が容易な建物 (図書館・美術館・博物館は除く) |
用途変更となるテナント入居の例
用途変更となる事例になります。事務所使用からの不特定多数の利用の業態や屋内階段が一つしかない(2方向以上の避難ができない)場合の入居や地下、3階以上の入居の際は注意が必要です。■例①
事務所ビルのテナントを、福祉施設や不特定多数の方が利用する飲食店や物販店などに変更する場合
※この場合、建物全体に自動火災報知設備や誘導灯が必要になる場合があります。
■例②
屋内階段が1つしかない建物の3階以上または地下を、福祉施設や不特定多数の方が利用する飲食店や物販店などに変更する場合
※この場合、面積に関わらず建物全体に自動火災報知設備や誘導灯が必要になります。また、避難器具についても消防法上の規制が強化されます。
■例③
事務所等の不特定の利用がない用途に変更する場合でも、変更を伴わない上の階に影響する場合もあります。
※この場合、2Fの避難器具の要件が30人→10人となります。
防火管理者
用途変更に伴う消防基準の変更だけでなく、防火管理者の選任についても注意が必要です。防火管理者の選任は各テナントの収容人数ではなく、建物全体の収容人数によって決まります。※防火管理者:建物防火のために管理上必要な業務「防火管理業務」を計画的に行う責任者であり、消防法に基づき対象の建物の管理権原者によって選任される。
※下の表は防火管理者の建物の規模による資格区分は明記していません。
建物の種類 | 収容人数 |
特定防火対象物(老人福祉施設等) | 10人以上 |
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特定防火対象物(上記以外) | 30人以上 |
非特定防火対象物 | 50人以上 |
用途変更で成功した事例 ー 栄町Aビル例 ー
・先行投資で長期的に見たメリット・間口が広がり将来的なニーズに対応
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放課後デイサービスと就労支援の事務所を開所するための30坪以上、駐車場付きの物件を探していると、福祉事業者様からお問い合わせが入り、事務所向けのAビル、空室の3Fをご紹介しました。ただし、これまでは全区画とも事務所向けに貸し出していたビルということで、複合用途(不特定多数の人が出入りする)がありませんでした。つまり、デイサービス、就労支援の入居に伴い、福祉施設の事務所であっても、必然的に消防法の業種の用途、16項の(イ)に変更となり特定防火対象物となるため、デイサービスの専有部分だけでなく、ビルの全体が適合している必要が出てきました。不特定多数の人が出入りするということで、その基準は厳しくなります。そこで、オーナー様のご協力とテナント側に避難器具設置を条件にしていただき、無事設置を進め、消防から許可を得ることができました。 これまで事務所向けに貸し出していても、今回のように不特定多数の人が出入りする業態が入ってきた場合、設備を見直す必要がでてきます。費用はかかりますが、 テナント入居者の業種・用途を増やすことで、 間口が広がり、空室解消につながります。長く空室にしているよりは、 早めに埋めて賃料を回収した方が長い目で見るとメリットが大きいという点も改めてお伝えいたします。
点検を行い設備の見直し、消防に確認を
消防設備に限らず、テナントビルにはエレベーター、電気設備、給排水設備など多岐にわたる設備があり、定期的な点検や修繕、設備投資が欠かせません。これらの維持管理を見越した対応が必要ですが、一番の目的は、 事故や火災を未然に防ぐために法律で決められた対策をとり、ビル側の義務として、万が一の場合に備えることです。そして、テナント側との協力も必要で、例えばテナント側の工事で天井まで間仕切りを造作した場合、未警戒区域が発生する可能性があり、後から問題が発覚すると大きなリスクとなります。そのため、入居前に工事計画を提出してもらい確認し、テナントと協力して必ず消防に確認をとって進めることが重要です。
テナント入居が設備を見直す機会となる
設備の見直しや設備投資を検討することで、今後のビル運営に備えることができます。特に、用途が変更となるテナントが入居する際は、それをきっかけに必要な対策を講じる絶好のタイミングです。ただし、オーナー様だけで判断するのではなく、当社へご相談いただくとともに、必ず消防署にも確認を取り、適切な対応をどうやって進めていくかを事前に把握することが重要です。費用面の予測を怠ると、契約や入居がスムーズに進まず、せっかくのチャンスを逃してしまう可能性があります。準備を万全にし、機会を最大限に活かしていきましょう。今回は、用途変更によって新たに消防設備が必要となるケースと、それに備えるための準備の重要性についてご紹介しました。また、実際にテナントの入居に合わせて消防設備を整え、契約に至った成功事例も取り上げました。 用途変更によりテナント募集の間口を広げる選択肢もありますが、それに伴う設備投資の必要性も出てきます。テナントの入居を単なる契約にとどめず、この機会をきっかけに、今後の経営方針や資産価値の向上も視野に入れながら検討を進めていきましょう。