建物の不備によって想定されるトラブル等と、実施しておきたいメンテナンス

ここでは、建物の不備によるトラブル事例や厳罰の内容等を紹介しながら、メンテナンス(点検)の重要性を伝えていきます。
法定点検編
消防設備点検

怠ると...損害賠償に発展するケースも。
消防法第17条で定められている法定点検制度です。有資格者が定期的に点検し、建物を管轄する消防署か出張所へ報告します。
機器点検は6ヶ月に1回、総合点検は1年に1回など細かく点検時期が定められています。ビルには、スプリンクラーや消火器、煙感知器、火災報知器などの防災・消防設備が備わっています。火災発生時にこれらが作動しないと逃げ遅れの原因となり、人命にかかわる事態に発展してしまう可能性もあります。
火災の原因が放火やテナントからの出火でも、定められた点検を行っていなかった場合には、ビルのオーナー様は建物所有者としての責任を問われ損害賠償を請求されるケースも。その代償は大きなものです。
火災事例
新宿歌舞伎町雑居ビル火災(死者44名、負傷者3名)
●出火原因=放火
●判決=ビル所有者とテナント経営者は禁錮3年(執行猶予5年)、テナント店長は禁錮2年(執行猶予4年)の有罪判決
●判決理由=「避難口の障害物の存置」「消防用設備等の不備」などを見過ごしたため
●損害賠償=計約8億6,000万円を支払うことで和解が成立
フロン類を排出する空調等の法定点検

怠ると...罰則が生じるケースがあります。 フロン類は、オゾン層の破壊や地球温暖化の原因となるため、大気中への放出を抑制することが必要です。
「フロン排出抑制法」(2015年施行・2020年一部改正)では、業務用エアコン等のすべての機器に3ヶ月ごとの簡易点検、一定規模以上の機器※1には第一種フロン類充填回収業者登録をしている者による定期点検(1年または3年ごと)が義務付けられています。
気密性が高く窓が開閉できないビルの場合、たとえば夏に冷房が利かないことになったら仕事にならない可能性も。来店客のくるサービス業などは来店数減につながってしまい、テナントとトラブルになってしまうケースも考えられます。
※1=圧縮機に用いられる電動機の定格出力が7.5kW以上。
※事務所使用でも、家庭用として製造された冷凍冷蔵庫・エアコンなどについては、家電リサイクル法に基づいてリサイクルされることとなります。
罰則
●点検義務を怠り、行政からの「指導→勧告→命令」を経て、なおその命令に違反した場合50万円以下の罰金
●フロンガスの漏えいが見つかった際、修理をしないでフロンガスを充塡することは原則禁止。フロンガスをみだりに放出した場合1年以下の懲役または50万円以下の罰金
●点検記録は、廃棄後3年間の保存が義務付けられています。記録の保存に違反し、行政からの「指導→勧告→命令」を経て、なおその命令に違反した場合は50万円以下の罰金
など
受水槽の法定点検

怠ると...水質事故だけでなく、テナント募集への影響も。 有効容量が10㎥を超える受水槽は、年1回以上の清掃を実施 することが義務付けられています。さらに、清掃後の水質検査も実施することが望ましいとされています。また、ポンプ、配管、便器や洗面台などは、耐用年数に合わせて定期メンテナンスと補修・交換工事が必要です。
清掃や点検が不十分で不備が発生すると、濁水や水に臭いが付く、断水などのトラブルがおこってしまうことも。また、貯水槽の容量が使用水量に比べて著しく大きい場合、水道水に含まれる残留塩素の濃度が下がり、消毒効果が失われることがあります。
NISHIDAでは「受水槽の清掃」「ポンプの点検」「水質検査」をセットで実施しておりますのでお気軽にお声がけください。
トラブル事例
雑居ビルにおける集団感染発生
●原因=排水ポンプの故障により、汚水及び雑排水が受水槽に混入。これにより給水された水道水が原因
●対応=修理と消毒の実施。簡易専用水道として把握されていなかったので、事件後、管理基準に基づく管理を行うことに
電気設備の法定点検

怠ると...近隣やインフラを巻き込むトラブル発生で、莫大な損害賠償を請求されることも。 電力会社から引き込んだ高圧な電気を、使用できる電圧に変換しているキュービクル式高圧受電設備。月次または隔月(3ヶ月)点検、年に一度の年次点検が法定点検として義務付けられています。
電圧変換用の変圧器、緊急時に作動するブレーカーなどの動作確認を行います。
想定トラブル
漏電などが発生した場合、感電事故・火災に加え、近隣にも停電が広がる波及事故が起こる可能性があります。
公共インフラの停止、操業停止による損失などが発生してしまうと、莫大な損害賠償を請求されてしまうケースもあるので注意が必要です。
エレベーターの法定点検

怠ると...動作不良によって死亡事故が発生することも。 エレベーターなどの昇降機を安全な状態に維持するためには、適切な維持管理が必要です。法定点検の周期は1年に1回。建物所有者は、建築基準法第12条第3項の規定に基づき、定期的に有資格者に検査させ、検査結果を行政に報告することが義務付けられています。
法定点検とは別に、建築基準法第8条に「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と定められていますので、定期点検を実施しておくことも必要でしょう。
事故事例
建物に設置されたエレベーターが開扉状態のまま上昇し、挟まれたことによる死亡事故
●事故原因=点検は実施されていたが、メーカーから保守業者への保守点検に関する情報不足や不十分な保守点検によるブレーキの故障が発生
※エレベーターの保守管理には高度の技術が必要で、昇降機検査資格者などに定期検査を行わせることが義務付けられています。今回責任を問われたのはメーカーや点検を実施した会社でした。しかし、このような死亡事故が発生してしまうと、オーナー様におかれましては、精神的苦痛や物件の印象悪化によるテナント募集への影響なども考えられます。
法定点検以外でも、定期的にメンテナンスしておきたい設備
自動ドア

人感センサーが反応しないと、挟まれなどによってけがをさせてしまうことも考えられます。定期的に点検を実施し、安全を確保することを推奨します。
シャッター
※防火シャッターは法定点検
シャッターの誤作動による痛ましい事故も報告されています。人や物を感知すると止まる安全センサーはしっかり作動するかなど、動作確認を定期的に行うことを推奨します。
トラブルが起きてからではなく、予防保全を行ったほうが設備の寿命自体も延びることがわかっています。
突発的な故障を避けるためにも、適切に法定点検や定期点検を実施するようにしましょう。
当社でも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。