敵将をたたえる

今年も残すところあと2ヶ月となりました。
いま国民の間で大問題となっているのが、あらゆる商品・サービスの軒並みな値上げです。原因はウクライナ侵攻に伴う原材料費の値上がりと記録的な円安なのですが、これを発端に経済活動の停滞と物価の継続的な上昇が併存するスタグフレーションになるのではないかという予測まで出てきています。
そのウクライナでの戦争は依然として終わる気配が見えず、重苦しい空気が世界中を覆っています。
そんななか先月末に国会で行われた演説は、一陣の風のような清々しさを感じさせてくれました。
他者を敬う気持ち
それは野党の元党首による、先の狙撃事件で突然この世を去った元首相への追悼演説でした。実に素晴らしい演説で、このような心根と気概がまだ息づいていたことに対して感動してしまいました。
日本の国会というのは、演説中に野次が飛び交うなんとも見苦しいイメージが強いのですが、このときだけは議場がしんと静まり返って皆が元党首の言葉に聞き入っていました。そうして時折挟まれる拍手の渦。感動的なひとときでした。
敵に塩を贈る気概
野党の議員が与党の元首相に哀悼の意を表す演説というのは、もちろん例がないだけに不思議な気がしましたが、志なかばで世を去っていったかつての敵将に賞賛の言葉を捧げる。それはなんとも日本人的な和の心を体現しており、遠く武士道の精神世界をも思い起こさせ、人としての徳義を持った政治家が日本にいるのだとの思いを新たにしました。
思いやりの心の大切さを
いま世界ではなんとか保っていたバランスが崩れて大変なことになっています。
海外では独裁者が専制政権を振るい、自分たちの都合ばかり優先させて他者をないがしろにする風潮が続いています。
そんななかで、相手のことを思い讃(たた)え、何ものにもひるまず国民のために尽くすことを弁舌で訴えたこの演説には、ほっと胸をなで下ろすものがありました。
残り少なくなった今年ですが、私たちも他者をいたわり皆で協力し合いながら、不穏で不安な空気が交錯するこの大変な時期を乗り越えていきたいと思います。