人間の厚み 人生の厚み
新年度が始まって1ヵ月が過ぎました。
毎年そうなのですが、この時期は特別な感慨に包まれます。
まずは、新しく私たちの仲間となってくれた新入社員たちを巡る思いです。
入社式を行い、社会人としての第一歩を踏み出した彼ら。不安と期待と意欲に包まれた彼らを見ていると、なんだか微笑ましい気持ちになってきます。いま活躍してくれているスタッフたちにも、こんな時期があったのだと思い返して、時の流れに思い至ったりします。
と同時に、若い彼らをこれからちゃんと育てなければならないという責任を感じて背筋が伸びてきます。
ドキドキ、ワクワク…彼らに負けないくらい、私も胸を高鳴らせて日々を過ごします。
数多くの出会いと別れと
この時期は1年でもっとも来客が多い季節でもあり、次から次へとお客様もやって来られます。
多くは外部の企業の方々で、春の異動で遠くに赴任される方や、新しく業務を引き継がれた方などです。
出会いと別れはワンセットなのですが、去り行く方の顔を見ていると一抹の寂しさがよぎります。
あっという間でしたね、ああ、あれもこれも一緒にしたかったですね、などと言い合いながら、またどこかで会うことを夢みたりします。
そこまでは毎年のことなのですが、今年は長い月日の流れに思い当たってしまいました。
こうして仕事を通じていろんな方を迎え入れて、そうして見送って、いったい何人の人と出会いと別れを繰り返してきただろうかと考えてしまいました。
そのなかには、いろんなことを教えてくださった方、困ったときに手を差し伸べてくださった方、迷ったときに示唆的な言葉をかけてくださった方もおられます。
ありがたい出会いがあって、いまの自分がいる。そのことに思い当たり、同時にそのことをつい忘れてしまっている我が身に気がつきました。
今に追われない努力
われわれは忘れてしまう動物のようです。
あんなに騒ぎ恐れた新型コロナウイルスのことも、過ぎ去ってしまえばすっかり忘れています。ロシアのウクライナ侵攻も当初は憤っていたものの、開始から二年も経てば諦めてしまっています。イスラエルとハマスの戦いも、終わりの見えない展開に心配することも忘れてしまいました。
そうして、我が身の目の前の課題解決にだけ夢中になって、あっという間に時が流れてしまう。
これはとても怖いことではないでしょうか。
大事なことも時の大河に流してしまっては、積み上げてきたものも姿を消してしまいます。
私の目標は、年齢を重ねるほどに厚みのある人間へと成熟していくことなのですが、私のいまを形作ってきた過去の大事なことを忘れ去ってしまっているのでは、その目標も遠く霞んでいってしまうにちがいありません。
価値ある人生を求めて
残りが短くなってきたからこそ、価値ある生き方をしたい。厚みのある人生というものを実現したい。
一企業の経営者という枠を超えて、成熟した素晴らしい人間になりたい。
そうして、それがひいては社会を良くすることの役に立つかもしれない…。
そんなことを考えながら、まずはお世話になった方々の顔を思い出す大事なミッションから始めたいと思っています。